高齢者の腰痛の原因・対処法
高齢者の方で腰の痛みがある方は多くいらっしゃいます。高齢者によくある腰痛の原因、腰痛の場合の動作時の注意点、温めていいか悪いかなどを簡単に紹介します。
腰痛の原因・対処法
高齢者の腰の痛みの原因は、病気によるもの、姿勢によるもの、筋力低下によるものなどさまざまな物があります。
ここでは、デイサービスなどに来られる方でよくみられる、高齢者の主な腰痛の原因を紹介します。
脊柱管狭窄症
デイケアなどリハビリに来る方でとても多いのが、脊柱管狭窄症です。老化などによる脊柱が変形し、それに伴い神経が圧迫されて痛みがでます。
腰痛だけでなく、お尻や太ももの痛み、しびれなどが一緒に出ることも多いです。
加齢に伴う背骨の変形によるものなので、徐々に起きてきます。
ひどい場合は手術が必要になりますが、軽い場合は、体操を行います。
根本的な治療にはなりませんが、腰の筋肉が硬くなること、腰が反ることで神経の圧迫が強くなり、痛みが増すため、腰の筋肉を緩めることで痛みが軽減します。
具体的には、仰向けで片膝または両膝を抱え、背中が伸びるよう腰を丸める運動をするのが効果的です。
温めることも効果があります。
歩行中の場合は、座って腰を丸めると痛みが和らぎます。
腰椎圧迫骨折
高齢者は、いつの間にかに腰の骨が折れていたり、転んで骨折したりすることがあります。
腰の骨が折れる(くだける)と、腰痛が起きます。
骨粗しょう症などで骨がもろくなっていると、椅子にドスンと座っただけでも折れることがあります。
くしゃみや体をひねるだけで折れたりもします。
折れるというより、骨がつぶれるといった感じです。
急激な痛みで起き上がれない、寝返りができない、歩けないというようなこともあります。
ただ、軽度の場合は気が付かず、後にレントゲンを撮ったときに「圧迫骨折の痕があるね」と言われるようなこともあります。
急激な痛みが出た場合は迷わず病院へ行きましょう。
強い痛みが出ていると思うので、まずは病院へ行きます。
そこで指示があると思いますが、しばらくはコルセットをして安静にします。
骨折ですので、ストレッチしようとしてはいけません。
治ってからの痛みは、筋肉が硬くなった痛みになるかと思います。変形して脊柱を圧迫すれば、脊柱管狭窄症と同じような症状になります。
骨が安定したら、ストレッチや温めを行って、筋肉を柔らかくしましょう。
腰回りをしっかりさせるには、腹筋や背筋の運動も効果的です。
ぎっくり腰
重たいものを急に持ち上げようとしたりした時や体をひねった時などに、腰の筋肉に急激な負荷がかかっておきる腰の捻挫がいわゆるぎっくり腰です。
腰に激痛が走り、動けなくなります。
正式には急性腰痛症といいます。
何かをしようと力を入れた時になるので、こちらは原因がぎっくり腰だとすぐにわかるかと思います。
痛めてすぐは、急性期のため、コルセットで固定し、安静にします。温めたりしてはいけません。
ある程度落ち着いてきたら、再度腰椎捻挫が起きないよう、腰部のストレッチや筋トレを行います。
姿勢による筋肉痛
無理な姿勢をとることによって、腰の筋肉に負担がかかって腰痛が起きることがあります。
いわゆるコリのような状態です。
腰椎の変形、片麻痺や膝痛による左右非対称な姿勢などが、腰に負担をかけることになります。
右麻痺では右に倒れるのを防ぐため、左腰の痛みがでやすく、左麻痺では右腰の痛みが出やすいです。
また、もともと腰椎圧迫骨折などの痛みがあったけれど、それによりよけいに腰に力が入り、今度は筋肉のコリにより筋肉が痛くなる場合もあります。
触ってみてボコッと膨らんでいれば、そこの筋肉を異常に使いすぎて痛みがでているということです。
悪い姿勢で長く座っていても、腰の筋肉に負担がかかり腰痛が出てきます。
健常者でもずっと長く座っていたら軽く腰痛が出たりしますよね。
体幹の姿勢保持の筋肉が弱っていると、よけいにそのようなことになります。
草むしりなどで普段しない姿勢をずっとしていたせいで起きる痛みもこちらになります。
急激に痛くなるのではなく、徐々に痛くなります。
座椅子やソファーなどにくつろいで座っているとだんだんとお尻を前にずらし、姿勢が悪くなります。
すると、腰に負担がかかり、腰痛がある方はさらに悪化してきます。
短い時間ならいいですが、座る時間が長い方は腰にかなりの負担がかかります。
まずは原因となっている姿勢を正すことです。誰かにマッサージをしてもらったりして一時的に和らいでも、姿勢が変わらなければまた痛みがでます。
硬くなった筋肉を和らげるために温めることは効果的です。仰向けで腰をゆっくりひねる、両足を抱えて体を丸めて腰を伸ばすなども効果的です。
自分の力で姿勢を正すことが難しい場合は、コルセットによって腰を支える方法もあります。
座っているとどんどん腰痛が悪化するようなら座っている姿勢の悪さが腰痛の原因の可能性があります。
椅子へは深く座り、お尻が前に滑っていかないようにしましょう。
お尻の同じところがずっと当たっていると痛くなるようなら、座布団を入れて調整するといいです。
お尻が痛くてずらず以外にも、体幹(お腹や背中)の筋肉が落ちたせいでいい姿勢を長くキープするのが難しい場合も多いです。
無理に力を入れて腰を伸ばし続けると逆に腰痛を引き起こす可能性もあります。
座面や背あての形を工夫することで、無理して力を入れなくても背筋が伸びてお尻もずれにくくなります。
もともと腰の部分は凹んでいる(反っている)ため、腰の部分の背もたれは出っ張っていた方がフィットして背筋が伸びたよい姿勢保持をしやすいです。
布団が合わない痛み
布団の硬さや柔らかさが体に合わないと、腰が反りすぎたり丸まり過ぎたりしてしまいます。
その状態で長く寝ていると、『寝起きに腰が痛い』ということになります。
柔らかすぎるとお尻が沈んで腰が反ります。
硬すぎてもよくないし、柔らか過ぎてもよくないです。
担当している患者さんで、テレビ通販のマットレスを買って使い始めたら腰痛が出たという方がいました。
購入した低反発のマットレスの下に敷き布団を敷いていたら痛くなったので、試しに敷き布団を薄いマットレスに変えたら痛みがなくなったとのこと。
おそらくやわらかすぎてお尻が沈んで痛くなったものと思われます。
どの布団があっているかは人それぞれなのでなんとも言えませんので、家にある布団を重ねてみたり、マットレスを抜いて硬くしてみたり、どんな硬さの敷布団があってるか試してみてはどうでしょう。
反り腰になったり、丸まりすぎたりしないよう、適度な硬さの布団にします。
腰椎椎間板ヘルニア(急性)
高齢者ではあまり聞いたことないですが、腰に負担がかかり、腰椎と腰椎の間にある椎間板の中身が飛び出して神経を圧迫しておきる腰椎椎間板ヘルニアという病気があります。
脊柱管狭窄症と同じように、脊柱を通っている脊髄神経を圧迫するため、腰やお尻、太ももの裏などに痛みやしびれがでます。
若い人でよくある病気です。
特に手術などをしない場合、痛みが激しい時にはまずは安静にします。コルセットなどを着用し、腰への負担を減らします。
脊柱管狭窄症とは逆で、強く腰を丸めると痛みが増しやすいです。
痛みが落ち着いてきたら、ゆっくり腰を反らせる運動やひねる運動で筋肉をほぐし、それと同時に腰回りをしっかりさせるための腹筋・背筋などの筋トレを行っていきます。
その他(病気による腰痛など)
腰痛の原因が筋肉や神経ではなく、内蔵にあることがあります。
腎臓や子宮などが肥大することでお腹や腰が圧迫されて痛みがでます。
筋肉の痛みであれば、よほで強い炎症でなければ、安静にしていれば痛みは和らぎます。
安静にしていても痛い場合は筋肉の痛みではなく、内臓による痛みの可能性が高いです。
検査してもらいましょう。
また、帯状疱疹など皮膚の疾患による痛みや神経痛などによる痛みの場合もあります。
その場合は皮膚科での治療になります。
腰痛は温めるか冷やすか
★急性期⇒冷やす
★慢性期⇒温める
腰痛には急性的なものと慢性的なものがあり、それにより変わってきます。
ぎっくり腰など、「うっ!痛っ!」と今痛くなったと分かるような急激な痛みは急性期の可能性が高いです。
このような時は炎症がおきています。
ぎっくり腰、腰椎圧迫骨折などの最初は急性期です。
炎症が起きているところを温めるとさらに炎症が悪化して痛みが増します。
炎症が起きているところは熱をもっていたりしますが、腰だと正直熱を持っているかどうか触ってもよく分からない場合もあります。
とりあえず、急激に痛みを感じた時には温めない方が無難です。
むしろ冷やした方がいいです。
私の母も、「ぎっくり腰になっちゃって~ 今こたつで温めてるの」と電話で言っていたことがあり、慌てて止めたことがあります。
温めたくなるのは分かりますが、急性期は温めてはいけません。
温めていいのは急性期が過ぎ、炎症が落ち着き、痛みが引き始めてきた時、または、徐々に痛みが出てその痛みが長く続いているような慢性的な腰痛の場合です。
炎症による痛みで腰に力が入り、それによりさらに痛くなる場合もあります。
そのため、もともと急性的に発症したぎっくり腰や腰椎圧迫骨折などでも、炎症が落ち着いてきたら温めて筋肉をリラックスさせることで痛みが和らぐ場合もあります。
ケガや病気ではなく、姿勢などが影響して筋肉が硬直して痛みが出ているような時は、温めて筋肉をリラックスさせるのが効果的です。
お風呂でゆっくり温めてもいいですし、こたつや温める器具を使うのもいいです。
腰痛にマッサージしてもいいか
★急性期⇒ダメ・安静
★慢性期⇒OK
マッサージをするということは血流をよくするということなので、温める場合と同様の効果があります。
そのため、炎症がある急性期にはマッサージもしてはいけません。
炎症がさらに悪化してしまいます。
温める時同様、長年の痛みや姿勢による筋肉の凝りによる痛み、治りかけの時などの痛みには、筋肉をほぐして痛みを和らげることが効果的です。
急性期はまずは安静です。
マッサージや温熱療法などのリハビリは、落ち着いてきてから行います。
寝起きの仕方
腰が痛い時、いきなり真上に上半身を起こそうとすると、腰に力が入ってしまうため痛みを誘発します。
まずは体ごと横を向いて腰を丸めるようにし、(ベッドであればそのまま足を下しながら)手と肘を付き、手で押す力も使ってゆっくり起きあがりましょう。
寝る時はその動作を逆にします。
いきなり仰向けに寝ると腰に痛みが走るので、まずは横向きに寝て、それからゆっくり仰向けになります。
仰向けに寝る場合は膝を立てていた方が楽です。
膝を伸ばすと腰が沿って辛いようでしたら、膝の下にクッションなどを入れておくのも効果的です。
腰痛を軽減するもの
腰痛を軽減するためには、薬や体操を行いますが、それと並行してコルセットやホットパック(温めるもの)を使うとより効果的です。
使っていい時期があるので、その点は気を付けてください。
腰椎コルセット(サポーター)
★急性期⇒安静を保つため使用
★慢性期⇒場合によって使用
腰椎圧迫骨折の時は、骨が折れているためもちろん腰椎コルセットで固定します。
こちらは病院で処方されると思います。
その他の急性期の腰痛の時も、コルセットをした方が楽な場合もあります。
金属支柱が背中側に入っている物がしっかりとし、その金属が出し入れ可能なものもあります。
ただし、慢性期に移行してからもいつまでもつけ続けていると腰回りの筋肉が弱ってしまい、よけいに腰痛が起きやすくなります。
医者に外していいと言われたら、できるだけ外しましょう。
つけてもつけなくてもいいくらいになったら、金属支柱を抜くか、もう少しソフトなタイプにしてみるのがいいです。
慢性的な腰痛の方も同様です。
長時間立って何かをする必要がある時など、腰に長く負担をかけていなければいけないような時はつけた方がいいですが、それ以外は外して様子をみましょう。
腰回りの筋肉が衰えてしまうと、いざコルセットを外して生活しようとした時、弱っている腰に異常な負荷がかかってしまい、また腰痛が出現します。
縦に長いタイプだと苦しいかも知れませんが、そちらの方がしっかり固定はできます。
痛みの度合いでガッチリ度を決めましょう。
ホットパック
病院や施設でも、慢性的な腰痛には温めることを行います。
病院の場合は電気で温めるものと電子レンジで温めるもののほかに、お湯につけて温めるタイプのホットパックがあります。
ご家庭でしたらコンセントか電子レンジのタイプが簡単でおすすめです。
冷やすのにも兼用で使える物もあります。
捻挫や膝の腫れの時などには冷やしで使うとよいです。
腰椎圧迫骨折やぎっくり腰(腰椎捻挫)の急性期は温めてはいけないので注意してください。
家庭用に売っている物をいくつか紹介します。
腰だけでなく、いろいろな部位を温められます。
画像ではうつ伏せですが、椅子に腰かけて後ろに入れて使ったり、仰向けで下に入れて使っても大丈夫です。
あまり分厚いタイプだと仰向けでは難しいかも知れませんが。