「最近、親の物忘れが増えてきた」
「同じことを何度も聞くようになったけれど、これは年齢のせい?」
「認知症と聞くけれど、どのような病気なのかよく分からない」
このような疑問を持つご家族は多いです。
年齢を重ねると誰でも物忘れは増えますが、認知症は単なる物忘れとは違います。記憶だけでなく、判断力や言葉、時間や場所を把握する力などが少しずつ低下し、生活に支障が出てくる病気です。
認知症にはいくつかの種類があり、その中でも多いのがアルツハイマー型認知症です。
この記事では、認知症とはどのような病気なのか、アルツハイマー型認知症の特徴や症状、原因、家族が気を付けたいことについて分かりやすく解説します。
認知症とは?
認知症は、脳の病気や障害などによって認知機能が低下し、日常生活に支障が出る状態です。
認知機能とは、記憶する、考える、判断する、言葉を使う、時間や場所を把握するなど、生活に必要な脳の働きを指します。
年齢とともに物忘れが増えることは珍しくありません。しかし、認知症では「忘れっぽくなった」というだけではなく、これまでできていたことが難しくなったり、生活の中で困る場面が増えたりします。
年齢による物忘れとの違い
年齢による物忘れでは、体験したことの一部を忘れても、ヒントをもらうと思い出せることがあります。
一方、認知症では、体験そのものを忘れてしまうことがあります。
例えば、
- 朝ごはんを食べたこと自体を忘れる
- 何度も同じ質問をする
- 約束をしたこと自体を忘れる
- 慣れた道で迷う
といった変化がみられることがあります。
ただし、物忘れだけで認知症と判断することはできません。気になる変化が続いている場合は、医療機関で相談しましょう。

「物忘れがある=認知症」ではありません。大切なのは、以前と比べて生活にどのような変化が出ているかを見ることです。
アルツハイマー型認知症とは?
アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも代表的なタイプです。
脳の中に変化が起こり、神経細胞の働きが徐々に低下していくことで、記憶や判断力などの認知機能が少しずつ低下していきます。
一般的には急に症状が出るのではなく、長い時間をかけて進行していくのが特徴です。
最初は「最近忘れっぽくなったかな?」という程度でも、進行すると日常生活のさまざまな場面で支障が出てくることがあります。
アルツハイマー型認知症でみられやすい症状
初期には、特に新しいことを覚える力が低下しやすくなります。
- 同じことを何度も聞く
- 最近の出来事を忘れる
- 物を置いた場所が分からなくなる
- 約束や予定を忘れる
- 料理や買い物など、慣れていたことが難しくなる
- 日付や曜日が分からなくなる
- お金の管理が難しくなる
さらに進行すると、言葉が出にくくなったり、場所が分からなくなったり、着替えや食事などにも手助けが必要になることがあります。
認知症にはアルツハイマー型以外もある
認知症はアルツハイマー型だけではありません。
代表的なものとして、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
それぞれ症状の出方に特徴があります。
レビー小体型認知症
実際にはないものが見える幻視や、日によって症状の変化が大きいことがあります。
パーキンソン病に似た動きの遅さや筋肉のこわばり、歩きにくさなどがみられることもあります。
血管性認知症
脳梗塞や脳出血など、脳の血管の病気が関係して起こります。
障害された脳の場所によって症状が異なり、物忘れだけでなく、歩行や言葉、判断力などに影響が出ることがあります。
前頭側頭型認知症
脳の前頭葉や側頭葉の働きが低下することで、性格や行動、言葉の使い方などに変化が現れることがあります。
物忘れよりも先に、以前とは違う行動が目立つ場合もあります。
このように認知症にはいくつかの種類があるため、気になる症状があるときは自己判断せず、医療機関で調べてもらうことが大切です。
認知症になる原因は?
認知症は一つの原因だけで起こるわけではありません。
アルツハイマー型認知症では、脳の中に特定のたんぱく質が蓄積するなどの変化が起こり、神経細胞の働きが徐々に低下していきます。
また、加齢、高血圧、糖尿病、脂質異常症など、さまざまな要因が認知症の発症リスクと関係しています。
そのため、認知症の予防を考えるときには、脳だけを見るのではなく、血圧や血糖値などを含めた健康管理も重要になります。

認知症は「年を取れば必ずなる病気」ではありません。生活習慣病の管理や身体活動、人との交流など、日頃からできることもあります。
認知症の初期に気付きたい変化
認知症の初期には、家族から見ると「ちょっとした物忘れ」に見えることがあります。
しかし、以前とは違う変化が繰り返されるようになったら注意しましょう。
- 同じ話を何度もする
- 同じ物を何度も買ってくる
- 料理の手順が分からなくなる
- 財布や通帳を頻繁に探す
- 薬を飲み忘れることが増える
- 慣れた場所でも迷う
- 以前より外出しなくなった
- 怒りっぽくなったり、不安そうにすることが増えた
一つ当てはまっただけで認知症とは限りません。
ただ、「以前は問題なくできていたことが、最近できなくなってきた」という変化が続く場合は、一度医療機関へ相談してみましょう。

私の母もそうですが、もともと同じ話を何度もするような方もいます。それは認知症の症状とは違うので、以前との変化をみるようにしましょう。
認知症が疑われるときは何科を受診する?
認知症が心配なときは、もの忘れ外来や脳神経内科、精神科、老年内科などで相談できます。
近くに専門外来がない場合は、まずかかりつけ医に相談しても構いません。
受診するときは、本人だけでなく家族から見た変化も伝えると診断の参考になります。
「いつ頃から変化したのか」「どのような場面で困っているのか」「以前と比べて何が変わったのか」をメモしておくと、医師に伝えやすくなります。
家族はどのように接すればよい?
認知症の方に対して、間違いを指摘したり、何度も思い出させようとしたりすると、不安や怒りにつながることがあります。
できないことばかりを見るのではなく、本人ができることを残しながら生活を支えることが大切です。
間違いを強く責めない
同じ質問を何度もされたとしても、「さっき言ったでしょう」と強く責めるのではなく、できるだけ落ち着いて対応しましょう。
本人にとっては、同じ質問をしているという自覚がないこともあります。
できることは本人に任せる
認知症だからといって、何でも家族が代わりにする必要はありません。
着替えや簡単な家事、散歩など、安全にできることはできるだけ本人に続けてもらいましょう。
自分でできることを続けることは、身体を動かす機会や生活の張りを保つことにもつながります。
生活リズムを整える
起床や食事、就寝などの時間をできるだけ一定にすると、毎日の生活を送りやすくなります。
日中はカーテンを開けたり、散歩や家事などで身体を動かしたりして、昼と夜のメリハリをつけましょう。

認知症の方への対応では、「できないことを補う」だけでなく、「できることを続けてもらう」という視点も持ちましょう。家族がすべてやってしまうと、身体を動かす機会まで減ってしまいます。
急に認知機能が低下したときは注意
認知症は一般的にゆっくり進行します。
そのため、数時間から数日の間に急に様子がおかしくなった場合は、認知症だけが原因とは限りません。
発熱や脱水、薬の影響、感染症などによって、一時的に意識や注意力が低下することもあります。
急に会話がかみ合わなくなった、急にぼんやりする、普段と明らかに様子が違うといった場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
認知症について家族が覚えておきたいこと
認知症は、単なる年齢による物忘れとは異なり、記憶や判断力などの認知機能が低下して生活に影響が出る病気です。
中でもアルツハイマー型認知症は代表的なタイプで、物忘れから始まり、徐々に生活のさまざまな場面で支援が必要になることがあります。
ただし、物忘れがあるだけで認知症とは限りません。症状の出方や進み方は人によって違います。
「最近ちょっと変だな」と感じた段階で記録をつけ、気になる変化が続く場合は医療機関へ相談しましょう。
早い段階から本人と家族で今後の生活について考えておくことで、必要な支援やサービスも選びやすくなります。
よくある質問
Q. 物忘れが増えたら認知症ですか?
物忘れが増えただけで認知症とは判断できません。
年齢による物忘れもあります。以前と比べて生活に支障が出ているか、同じことを何度も忘れるようになっているかなどを確認しましょう。
Q. アルツハイマー型認知症は急に発症しますか?
アルツハイマー型認知症は、一般的には時間をかけて進行します。
急に認知機能が低下した場合は、別の病気や体調不良などが隠れていることもあるため、早めに医療機関へ相談しましょう。
Q. 認知症の人に物忘れを指摘してもよいですか?
何度も間違いを指摘すると、不安や怒りにつながることがあります。
できるだけ本人の気持ちを否定せず、困っていることを一緒に解決するように対応しましょう。
まとめ
認知症は、記憶や判断力、言葉、時間や場所を把握する力などが低下し、日常生活に支障が出る状態です。
アルツハイマー型認知症では、物忘れなどから始まり、時間をかけて症状が進行していくことがあります。
「年齢のせい」と決めつけず、以前と比べた変化を家族が見ておくことが大切です。
気になる症状が続いている場合は、もの忘れ外来などの医療機関へ相談しましょう。
また、認知症になったからといって、すべてのことを本人に代わって行う必要はありません。安全にできることは本人に続けてもらい、できることを残しながら生活を支えていきましょう。

認知症によく似た症状でせん妄という病気があります。せん妄については下記の記事で詳しく紹介しています。

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